図.オージス総研の全社的なITSS活用プロセス

オージス総研は大阪ガス100%出資の情報システム子会社として設立された。現在では様々なお客様における基幹業務システムの設計、開発から運用・管理までの一貫したサービスを提供している。特にオブジェクト指向技術に関しては、国内の草分け的な存在として、業界内でも認識されている。
オージス総研が「ITSS-DS」を導入した目的は、ビジネスの方向性に沿った人材育成に活用するためである。
パイロット的な取り組みを経て、1年後に全技術者にスキル診断を実施
「当社のビジネスの方向性と人材スキルのマッチングを図るためには、どんなスキルをもつ人材がどのくらいいるのかを確認し、今後の検討材料にしていく必要があります。そのために『ITSS-DS』を用いて、スキル診断を行うことを決めました」と、ITスキルセンターの今井康雄氏は振り返る。その先がけとして2004年の秋、シニア層およびPMの約200人を対象にスキル診断を実施した。「まずはパイロット的な取り組みとして実施しました。各技術者のスキルレベルが確認できるだけではなく、全国平均との比較によって、客観的な価値も明らかになりました。また各スキル項目別の弱点・強点も把握できるので、育成にも活用できることが実感できました」(今井氏)1年後の2005年10月には900人弱の技術者全員に、スキル診断を実施した。昨年度の経験を生かして、社内で使われている職種とITスキルスタンダード(ITSS)の職種の対比表など、スキル診断を受ける際にとまどわないようなガイドラインも作成した。その結果、受診率は99%にも達し、職種の選択違いなどのミスはほとんど見られなかったという。
この診断が2回目となったシニア層に関しては、前回の診断結果と比較したところ、スキルアップが図られていたという。「自身の強み、弱みが分かるので、スキルアップの目標が立てやすくなったからだと判断しています」(今井氏)
また、同社のスキル診断には独自の工夫が施されている。それがオブジェクト指向開発スキル診断だ。「当社のビジネス戦略を強化するには、オブジェクト指向開発技術者の増強が不可欠です。そこで、オブジェクト指向開発という専門スキルを診断する画面を付加しました」(今井氏)
このオブジェクト開発スキル診断は、オブジェクト指向開発を過去に経験した技術者が受診した。診断は総合レベルに加え具体的なスキルの強み、弱みが把握できるようにモデリングや実装など作業分野別にも結果を出している。
診断結果を潜まえて、弱みを補い、強みを伸ばす仕組みづくりヘ
オージス総研では、スキル診断を行うことによって、技術者自身がスキル診断の結果を育成へとつなげるため、自社主催の研修を整備している。「職種別のITスキル研修を、ITスキルセンターと人材開発チーム双方が連携して、提供しています。研修ロードマップや研修内容はホームページで公開し、スキルアップのガイドマップとして活用できるようにしています」(今井氏)。同社では毎年秋にスキル診断の実施を予定している。本格的な実施は今年が2回目となる。従って今年度の診断結果が出てはじめて、前年との比較ができるようになると今井氏は期待している。「『ITSS-DS』の良いところは、全国での受診者の数が多いことです」、と今井氏は評価する。
「受診者が多ければ多いほど、データの信頼性が増します。その中で自社のスキルの位置づけや特性を客観的に捉えることができるようになったこともメリットです。その上、業種や規模など組織的に良く似た会社との比較など、詳細な分析ができます。将来的には、これらを自社の戦略に活かしていきたいですね」(今井氏)
もちろん「ITSS-DS」は万全ではない。あくまでも診断結果は自己申告によるものだからだ。「中には控えめに判断しているなど、会社の評価とギャップのある人もいます。今後はいかに、そのギャップを少なくし診断結果に客観性を持たせられるかが課題ではないでしょうか」(今井氏)。
Company Profile
株式会社オージス総研
![]() |
| ||||||||||
オブジェクト指向技術者の育成を目的に設置されたセンター。最近では当社の課題となるITスキル全般の向上を目指し、各種研修コースを実施している。ITSS準拠のスキル診断も技術者全員を対象に年1回実施しており、その結果を育成に活用している。 |
※記載内容は記事掲載当時のものです