



数年前まで同社では、プロジェクト・マネジャー(PM)の育成を積極的に行ってきた。もちろん、このようなマネジメント力もサービスインテグレータにとって重要な要素である。しかし、顧客が最も価値を感じるのは技術力だ。そこで「自社の技術の独自性や優位性を確立し、他社との差別化を図るためにも、スペシャリストの育成を重点的に行う」ことになった。自社にはどのレベルのエンジニアがどれだけいるのか把握するために、2004年度からスキル診断を実施している。
全社最適のリソース配分が行える素地が整った
対象となったのは、スペシャリスト型キャリアを指向しているエンジニア。技術者約1600人のうち、2004年度から毎年400人以上のエンジニアがテストを受けているという。ITSS-DSによるスキル診断を実施したメリットについて、同社では、「戦略を遂行するためのリソースマップが見える化されたことだ」と指摘する。「これまで各事業部でどんな技術をもった人材がいるか、社外と比べて力量がどうなのか漠然としていたが、ITSS-DSの導入により、そういうことが判るようになった。さらに、社員一人ひとりにいつまでにどのスキルをどのレベルまで身に付けられるような育成をしよう、といったリソース戦略についての議論が具体的に行えるようになったことが最大のメリット」と同社では評価する。
なお、同社では人事制度の変更に合わせて、ITSS-DSを導入した。これまでの職務グレード制度(ミッションレンジ制度)に加え、社内におけるプロフェッショナルの認定制度(「プロ認定制度」)を導入した、そのプロ認定制度の必要条件の一つにITSS-DSの診断結果を位置づけた。その職務に就くための専門性を明らかにし、かつそれに研修や処遇を密接に連動させた人材開発体系を構築している。
このような体系が構築されたことは、エンジニアにとってもメリットとなった。診断結果によって、将来自分のキャリアを実現するにはどのような経験やスキルを身に付けなければならないか分かるので、「上司にこんな業務に携わりたい、研修を受けたいということを相談できるようになった」と同社では語る。
しかし、ITスキル標準(ITSS)には課題もあると指摘する。
診断結果には主観が入っていることも忘れずに
「PMの場合、プロジェクト金額の多寡が、スキルレベルに反映される。たまたま携わっている案件の規模が小さいからといって、スキルが低いとは一概にはいえない。それをどう解決するかが課題です。」(同社)さらにITSS-DSについては「スキル診断の結果に主観が入ることを念頭におくべき」だと指摘する。「上司もチェックしますが、あくまでも申告するのは本人です。そこには限界があると考えています。」(同社)
ITSS-DSには数多くの質問があるため、得られた数値はある程度の客観性は保たれることは間違いない。しかし、その中には多少の主観が入っていることも頭に留めておく必要がありそうだ。
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NECネクサソリューションズ株式会社
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