ITエンジニアが、自社のみならず業界内でのポジションや評価を知ることができる「ITSS-DS」は、スキルアップやキャリアップのツールとして極めて有効だという。
ITSSの取り入れ方

NECソフトにおける人事の基本サイクル

ITSSの取り入れ方

NECソフトにおける人事の基本サイクル

同社が「ITSS-DS」によるスキル診断を社内で初めて実施したのは2003年。同社の人事制度にITスキル標準(ITSS)を導入することになったのが、実施のきっかけだった。
同社はそれまで「矢車型人事制度」という人事制度において、独自に社員の職種とスキルレベルを定義していた。それらの職種とスキルレベルがITSSとマッチするかを検証するデータを得るために、1300人のITエンジニアを対象に診断を行った。
診断結果を人事データと比較したところ、ほぼ連動していることが分かった。「NECソフトの人事制度も、ITSSと同様、7段階で評価していました。例えば社内レベルが5のプロジェクト・マネジャーであれば、「ITSS-DS」の診断結果も、かなりの割合で5になっていたというわけです。「ITSS-DS」を実施したことで、自社での価値と市場価値が一致することが確認され、ITSSを人事制度に導入することができました」(ITトレーニングセンター長の福嶋義弘氏)。「ITSS-DS」の有効性を確認し、2004年には再度、「ITSS-DS」によるスキル診断を実施した。
戦略的な人材育成に活用できる
自分のスキルレベルを把握するためにも、「ITSS-DS」をぜひみんなに受けてほしい──。福嶋氏がそう考える理由の1つが、「ITSS-DS」の受診によって業界内における自分のポジションや評価が分かること。それがスキルアップの動機付けに結びつけばよいと言う。「自分のポジションが分かることによって、将来の方向性も見える。「ITSS-DS」はキャリアアップのツールとして、極めて有効だ。もちろん個人だけではない。企業にとっては、「ITSS-DS」の結果を年齢別や職種別、取得資格別など、さまざまな切り口で分析することで、現状を知ることができる。そして今後、戦略的に必要になる人材の育成にも使える」と福嶋氏は語る。グループ独自の人事情報管理システムとの共存を目指す
「ITSS-DS」を有効に活用する上で今後取り組むべきテーマとして、NECソフト独自の人材情報管理システム(SIES)との融合が挙げられる。「SIES」では2400~2500におよぶアセスメント項目が入っており、社員はこれを行うことが義務付けられている。その上、同システムには、NECグループの専門SE制度の申し込み機能も含まれている。同社ではこのシステムで人材に関するあらゆる情報を管理している。
「当社では社員の混乱を避けるためにも、あえて「ITSS-DS」の受診を強制していません。「SIES」と「ITSS-DS」の融合をどう図っていくか。それは当社の今後の課題です」(福嶋氏)。
融合を進める施策の一環として、2005年4月1日にITトレーニングセンターを設立した。ITトレーニングセンターは、エンジニアのスキルレベルの向上を目的に設立された。エンジニア教育の体系を整備し、社内外のエンジニアを対象に教育サービスを提供する。
「『ITSS-DS』は個人の価値が判断できるツールなので、有効に使いたい。ITトレーニングセンターの活動を通して、「ITSS-DS」と自社独自のSIESや専門SE制度を融合させられれば、より強力で効果的な人材育成制度を実現できると考えています」(福嶋氏)。また「ITSS-DS」を人材育成ツールとしてより使いやすくするためにも、社内での業務経験や取得資格、TOEICの点数などを考慮する仕組みも加えたいと語る。

Company Profile
NECソフト株式会社
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社内外のエンジニアを対象に教育サービスを提供し、市場で評価される高度技術を持った技術者を育することを目的に2005年4月1日に新設された部門。ITSSの11職種を中心に、それぞれの達成度指標、スキル熟達度を考慮して育成の体系、制度を整備拡大する。 |
※記載内容は記事掲載当時のものです