また会社にとっては、人材育成戦略の方向性を確認できるなど、様々な効果があった。
「エンジニア1人ひとりの強み、弱みを浮き彫りにし、弱みを解消する教育を提供する」──。沖通信システムの川上庸郎・業務部人材開発課課長は、「ITSS-DS」による社員のスキル診断を実施した目的をこう語る。
同社は、従来、沖電気グループ内の通信ソフトウェア設計を中心とする事業を分担してきた。その際は、エンジニアの職種も限られており、教育の内容が定型的でも、さほど問題はなかった。
しかし近年は、携帯電話向け組込みソフトや業務アプリケーション開発まで、ビジネスの幅が広がってきた。そうなると配属されている部門によって、エンジニアに求められる技術が異なってくる。また、ビジネススタイルも受託型から、提案型へと変化が求められるようになり、従来のように「技術」だけではなく、「マネジメントスキル」や「ヒューマンスキル」などのスキルも重視されるようになった。
「ITSS-DS」で全社員のスキルレベルを客観的に把握
そこで同社は教育システムの改革に着手。ただし、その前に取り組むべきことがあった。現在の社員のスキルレベルを調査することである。そして、そのツールとして着目したのが、「ITSS-DS」だった。川上氏は、まず約70人のエンジニアを対象に「ITSS-DS」によるスキル診断を試行し、その結果を社内の評価と比較してみた。川上氏は、「調査結果には妥当性があり、社員のスキルを診断するに耐えるツールだ」と判断。2004年3月、全エンジニアを対象にスキル診断を行うことになった。
弱みを解消する教育を提案、組織力へとつなげる
「ITSS-DS」によるスキル診断を実施したところ、大きく3つの効果があったという。第一に、エンジニア一人ひとりのスキルレベルが数値化され、強みと弱みが浮き彫りになったことだ。その結果、どのような研修を受けさせればいいかが明確に分かるようになった。沖電気グループでは現在、400コースにも上るeラーニングを用意している。だが沖通信システムでは、従来、社員に受けてもらう研修を判断する明確な基準がなかった。「ITSS-DS」による診断を実施することで、その問題が解決された。「『○△スキルが弱いという結果が出た人は、この研修を受けるとよい』という対応表を作成し、申込書とともに全社員に配った」(川上氏)のである。
第二の効果はエンジニア個人が、社内だけではなく、世の中における自分のスキルレベルも把握できるようになったことだ。「社内で評価されていても自分の技術が外で通用するのかが分からず、自分のスキルに自信が持てないエンジニアも多かった。「ITSS-DS」では、社内だけではなく、業界でのポジションが分かるので、自信につながるはずだ。また、まだレベルが低いという自覚がある人は、スキルアップの目標にもなる」と川上氏は期待する。
第三の効果は、会社としての人材育成戦略の方向性を確認できたことである。同社は、アプリケーション・スペシャリストやソフトウェア・デベロップメントの人材が豊富だ。市場での競争力をより高めるため、今後は営業力やコンサルティング力の強化を図る工夫が必要であることが再確認された。

年齢別スキルレベル比較/社内資格との比較

社内に定着させ、協力会社やパートナーへも広げる
現在、2回目の全社的な診断を実施中だ。診断結果を1回目の診断結果と比較し、職種やレベルと社内処遇資格との位置づけを説明することにより、個々に会社が求めるスキルレベルを把握させる予定だ。また同社は「ITSS-DS」を活用して人材情報を統合管理するシステム「ITSS-Huris」を開発し、販売を開始した。同社のビジネスにとっても、「ITSS-DS」は重要なポジションを占めつつある。
「『ITSS-DS』の有用性を広く理解してもらい、社内に定着させたいと考えています。そしてエンジニア一人ひとりに、自ら“スキルを磨く”マインドを身に付けて、世の中に通用する人材に成長していってほしいですね」(川上氏)。「将来的には協力会社やパートナーへも広げていきたい」と、「ITSS-DS」への期待は膨らんでいる。
「人材情報システム(ITSS-Huris)」の構築

Company Profile
沖通信システム株式会社
![]() |
| ||||||||||
人材開発課では経営方針に基づく、社員のスキル向上に関する全社的な施策の実行を担当している。
具体的には、
|
※記載内容は記事掲載当時のものです