人材育成コラム

リレーコラム

2018/4/20 (第95回)

「働き方改革待ったなし!」に関連する世の中の様々な動き

ITスキル研究フォーラム クラウド人材WG主査
株式会社NTTPCコミュニケーションズ 営業本部 営業企画部長

中山 幹公

 今、日本で最大の課題といってもいい「働き方改革」。みなさんもこれについては自社で具体的に取り組まれていたり、働き方改革を支援するソリューションを提供していたり、独自にいろいろと研究されているといった方も多いと思う。
 私自身、働き方改革について専門家というわけではないのだが、今回は自分なりに周囲の身近な動きも含め、興味を持ったトピックスを書いてみたい。

 まず、「働き方改革」がいわれるようになった背景だが、2015年のクリスマスに起こった、電通の女性社員の痛ましい自殺がまだ記憶に新しいところだが、「働き過ぎ」「過労死」「メンタル不調による自殺」などの問題が確かにあるだろう。しかし、これは10〜20年前から盛んにいわれており、今に始まった話ではない。最近でも野村不動産の社員の過労死がニュースになっている。一方で、世の中で時短時短と広く叫ばれていても、なかなか「働き方」や「長時間労働」が顕著には変わらなかったという企業も多いだろう。
 しかし10年20年たってじわじわと人々の意識が変わってきたというのもある。特に電通の事案は自殺前のご本人のtwitterの書き込みなどもクローズアップされ、いかに内部がひどい状態だったか、一般の方々にまで広く知られることとなった。これもひとつのソーシャルパワーであろうが、「さすがに、今の時代にこれはひどい」と感じた方も多かっただろう。今思い返しても本当にかわいそうで、こういう犠牲を二度と出してはいけないと強く思う。
 なかには、「自分の若い頃にはこれくらいは当たり前で・・・」なんて思う御仁もまだいらっしゃるかもしれないが、10年20年たつと、世の中の価値観は変わってくるもので、自分たちの価値観も変えていくべきだ。
 企業は、長時間労働の抑制にこれまで以上に真剣に取り組まなければならず、それはもはや変えようのない流れである。

 一方、企業のみならず、日本経済全体が抱える構造的な課題が人口減である。
 日本の人口は、明治以降急速に増加し、2010年を頂点としてグラフでいうとほぼ真上に線が延びるがごとく天井を迎えている。そして、ジェットコースターが頂点から落下するかのようにその後急激に減少に転じる。2110年あるいはそれから程なくした頃、明治維新の時と同じくらいの人口になると予測できるのである。世界の先進国も同様の状況をそのうち迎えると予測されているが、日本はこのジェットコースター現象が一番早く如実に表れる国なのである。
 労働力の減少、人手不足、人件費高騰という流れは、多くの企業には避けられない「すでに決まっている課題」である。
 実際、すでにじわじわとその兆しは至る所に表れているのはご存じのとおりである。
 まさに企業は、人手不足や人件費の高騰に直面しながら、一方で長時間労働も抑制していかなければならないという環境におかれている。簡単にいうとそうした状況が「働き方改革待ったなし!」といわれる背景である。

 迫りくるそうした課題に対する対策の第一の基本姿勢は「生産性の向上」ということになる。
 具体的な生産性の向上施策にはいろいろあるが、手っ取り早く取り掛かれるのはITのツールを使うことであり、代表的なのが昨今の「RPAブーム」である。今、RPAのセミナーに参加しようとしても、すぐに満席となりなかなか参加できないほどの人気ぶりである。
 実際RPAを導入する企業も増えており、例えば三菱UFJ銀行は、約2年間で約20種類の業務にRPAを導入し、年1万時間分の作業を減らす成果を得たそうだ。
 またリクルートもRPA導入を加速し、自動化する作業の種類を2018年度末までに現在の1.5倍に増やすという。これまで、ERPの導入となると、全社的なプロセス改革とセットとなり、なかなか進まず、なかには頓挫してしまうケースも珍しくない。その点、「まずできるところから」というアジャイル的な発想で導入しやすいのもRPAの魅力である。
 RPAを導入しやすい業務として、データ集計や入力・管理、帳票作成等のサプライチェーンや経理等の事務業務、あるいはITの各種設定等も含まれるだろう。

 ところで、企業のネットワークインフラのエンジニアも昨今非常に人手不足が顕著である。そこで注目されているのが、弊社NTTPCも「Master’sONE CloudWAN」として提供している「SD-WAN」である。
 「クラウド」が世の中に出現し、それまで人手や時間をかけて行っていたサーバーの構築やリソース追加などの作業がコントロールパネルの操作ひとつで行え、さらにはあらかじめ設定していた閾値などをもとに、自動的にリソース変更が行える、というのがあっという間に常識になった。
 一方、ネットワークの世界は、相変わらずルーターなどのネットワーク機器の設定や変更は現地の機器を触って行わなければならないのだが、これをクラウドのようにコントロールパネルにてリモートで行えるのも「SD-WAN」のメリットだ。ほかにも多くのメリットがあるのだが、本題ではないので割愛しよう。
 この「SD-WAN」も、RPAに負けず劣らず人気であり、2018年4月26日に都内で、筆者が事務局をやっている「SD-WAN座談会」が開催されるのだが、なんの宣伝もせずにサイトをオープンしたらすぐに満席になる人気ぶりだ。

 もっと長期的観点で期待されているのが、AIや機械学習等だ。これらの一般企業への導入がキャズムを越え普及していくのは少し先かもしれないが、この手のセミナーが人気なのもご存じのとおりである。AIによる自動運転や本格的なロボットなどが普及してくれば、一気に世の中の人手不足を解消するような期待もあるが、自動運転による事故なども発生しているし、法律などの環境整備もまだまだであり、当面の間、企業は人手不足に悩まされることとなるだろう。

 人手不足や従業員の高齢化などが特に加速していて、もっとも働き方改革が急務であるといわれているのが、フィールドワーカーを抱える建設業、運輸業、警備業、農業、畜産業等の業種である。フィールドワーカーはホワイトカラーと比べて、若手や女性のなり手が少なく、その結果、一般の業種よりも加速度的に従業員の高齢化が進んでいるのである。
 こうした業種における「働き方改革」は、「生産性の向上」に加えて、「高齢化社員の健康ケア」も他業種と比べてより一層重要となってくる。例えば長距離バスやタンクローリーの運転手の健康起因による事故で、大事故となったり、利用者の人命が失われたりしているのはご存じのとおりである。
 これにもITが期待されており、弊社NTTPCでも「みまもりがじゅ丸」というウェアラブルデバイスにより心拍を管理し、フィールドワーカーのラインケアを行うIoTサービスを提供しており、フィールドワーカーを多数抱える企業から多くのお引き合いを頂いている。
 また、農業事業者の高齢化により地方での耕作放棄農地が増え、猪や鹿などの有害鳥獣が増えており、被害額が年間200億円に上るという現状もある。そうした有害鳥獣を駆除する猟師もまた高齢化しており、設置した駆除用の罠を見回るのが負担であるという。そこで弊社NTTPCでは「みまわり楽太郎」という罠に鳥獣がかかるとメールでお知らせするIoTサービスも行っている。

 クラウド、RPA、IoT、AIなどというと、テクノロジードリブンで注目されているように思いがちだが、こうしたブームには、説明してきたような社会的背景が一方であり、サービス提供者側も、テクノロジーだけでなくマクロな社会経済の流れをつかんで肝に銘じつつ、サービス開発やサービス提供にあたっていく必要があるだろう。

 ほかにも、関連する動きとしては、副業を認める企業が増えていることがあげられる。副業解禁はもちろん、副業を推奨する企業も増えている。なかには逆に「専業禁止」を掲げる企業も出てきているほどだ。副業は「時短」という考え方からは逆行するように捉える向きもあるが、そうではなく、多様な働き方を認め、社会全体の生産性を高めていこうとする動きであると捉えた方がいいだろう。

 また、リモートワークのためのワークスペースも増えている。カフェや貸スペースなどはもちろん、カラオケボックスや、ジムを併設したようなワークスペースもある。最近は、あの「フーターズ」でも「フーターズガール」の接客を受けながらリモートワークができるという。

 ここまで見てきたとおり、「働き方改革」にはいろんな背景やアプローチの仕方があり、単純な話ではない。それを考えていくためには、説明してきたような構造的問題や社会的な背景、さらにいえば、そもそもこれから先テクノロジーがさらに発展していくと、人類はどう仕事と向き合っていくべきなのだろうか、というような大局観と、一方で「柔軟な発想」や「多様性の尊重」といった各自の 価値観の転換が必要ではないだろうか。

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