人材育成コラム

リレーコラム

2016/04/20 (第73回)

新人育成の「コラボレーション」について考える

ITスキル研究フォーラム クラウド人材WG 主査
NTTコミュニケーションズ 西日本営業本部

中山 幹公

 桜の時期を迎え、今年も新入社員が入社してくる時期となった。街中にも、見るからに新入社員だろうという集団が散見される。みなさんの会社には何名くらいの新入社員が入社されただろうか。
 私の話をするときっと驚かれる方も多いと思うが、NTTグループが現在の形になる前、筆者の所属するコミュニケーションズ、それから現在の東日本・西日本、さらにはドコモもまだ分社する前の大きなNTTだった時代の入社であり、時期的にはいわゆるバブル入社世代になるのだが、なんと同期入社が3千人である。

 3千人も同期がいると、なかなか一か所に集めて、ともいかず私の入社した年の入社式と新入社員研修は日本全国数か所に分かれて開催され、 社長のあいさつはリアルタイムな映像で中継された。そうなってくると、当然ながら同期であっても全員が顔見知りとはいかない。むしろ知らない人が多いと言った方がよいだろう。
 実は先日、社内で多年勤務表彰を頂いた。といっても入社して一定期間の年数が経つと、誰もがもらう賞なのだが。
その表彰式で20名程度の同期入社メンバー(3千人のうちの、現在の所属会社がNTTコミュニケーションズで、西日本エリアに勤務している人限定)が集合したがお恥ずかしい話、ほとんど同期だと認識できている人がいなかった。もちろん顔見知りではあっても、「あ、○○さんって同期だったんだ」とそのとき気付くといった具合である。(この年齢になると、同期に限らず見かけで歳はわかならいものだ)

 そのほか、今ではグループ会社でありお取引先となったNTT西日本やNTTドコモ等に訪問して、色々とお話していると実は同期だったというケースも少なくない。
 そんな具合に“後付け”でわかった同期でも、同期だとわかると何となく親近感が湧くものである。おかげで、仕事上のコミュニケーションが 同期とわかる前よりスムーズになったり、グループ会社間での商談もうまくいったり、場合によっては「今度飲みに行きましょう」となり個人的に親しくなったりする場合もある。
 また、新入社員の時期に、当時はかなり長い期間集合研修があったりしたのでそこで同じクラスになると、まるで学生時代のクラスメートのような感覚になり、今でも友人関係だという場合もある。中には、そこで生涯の伴侶を見つけた同期もいたりする。
 そんなこんなで、3千人いても、同期というのはありがたいものだということだ。

 3千人は特殊例としても、このIT業界には数百名規模で新卒を採用する会社もあれば一方で新卒は取らない会社も多いし、1〜2名だという会社も多い。そうした場合は、同期のコミュニケーションも非常に限定され、入社して社内のいろいろな相談事を気軽に共有できる貴重な関係を持てる相手がほとんどいない、という事になる。同期間で切磋琢磨という効果も小規模にならざるを得ない。
 また企業の側から見ても、新入社員の育成スタッフを専門でつけたり育成メニューを自社で考えたりというのもかなりの負担になることだろう。
 そこで面白い取り組みをされているケースを紹介したい。筆者も会員として所属している「MIJS(Made in JAPAN Softwareコンソーシアム)」の「人材育成委員会」である。

 MIJSは、日本のソフトウェア会社が集まって活動しているコンソーシアムであり、いくつかの委員会に分かれて活動していて、新理事長 株式会社WEIC 内山社長のもと、新たなビジョンを発表したばかりである。( https://www.mijs.jp/ )
 人材育成委員会の活動は、例えば前述のような課題を持つ会員各社から新入社員を集めてコンソーシアムとして新人研修を実施している。 ちなみに、新人研修は2011年から今年までこれまで6回行われており、多い時で11社59名で実施したということだ。自社では1〜2名の新入社員でも、コンソーシアムで集めればこのような規模になるという訳だ。また、一社の研修ではなく各社の集合体であるということが効果を産む側面もあり、このIT業界では必須である「同業他社との協業」のスタンスが自然に身に着くというのだ。

 カリキュラムは、MIJSオリジナルのものを内製しており、毎年ブラッシュアップされている。研修は春に5〜7日間、夏に半日、冬にも1日行われ、ビジネスマナーから始まり、プレゼンテーションやロジカルシンキング等について学んでいく。プレゼンの発表会では、各会員企業のトップが審査委員となるというコンソーシアムならではの豪華なものだ。
 この春にこの委員会もメンバー改選があり、株式会社ヒューマンセントリックスの中村社長が新たに委員長に就任され、委員会名も通称「人(ひと)委員会」とし、新人研修の他にも中堅社員育成やNo.1プログラマ決定戦、プレゼンバトル等、新たな活動も加え活発化していくようだ。(「人委員会」のイメージについては、こちらの動画もご覧頂きたい↓)
https://www.youtube.com/watch?v=ygBmtmnFBwk

 新入社員育成をアウトソースする会社もあると思うが、このケースはいわゆるアウトソースではない。拡大版のインソースとでも言った方がいいだろう。
 新人のころから同業界の他社の同期メンバーと一緒にこうした育成メニューを通じパイプができるというのは個人にとっても後々非常に有効だろうし、日本のIT業界としてもビジネスコラボレーションの活性化につながる効果が期待できる。ひいては日本経済の成長の阻害要因としてしばしば指摘される雇用の固定化を打破し、流動性を高める効果もあるのではないかと思う。
 新入社員が多数いる大企業では、なかなか難しい面もあるとは思うが企業規模の大小問わずビジネスのコラボレーションが進む昨今、新人育成のコラボレーションもあってもいいのではないだろうか。

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