人材育成コラム

リレーコラム

2015/04/20 (第62回)

最近のIoT事例と業界動向 〜IT企業に求めれられる人材育成〜

ITスキル研究フォーラム クラウド人材WG 主査
NTTコミュニケーションズ 西日本営業本部 担当部長

中山 幹公

 「IoT」…昨今はIT関連のニュースではこの言葉を耳にしない日はない。なんとなくどんなものかはわかっていても、ビジネスの現場でも会話の中に具体的に出てき始め、ちゃんと勉強しなきゃと思っている方も多いのではないだろうか。
 IoTは、私とともにこのコラムを書いている八子氏がコンサルの立場でご専門なのであるが、私のほうでは、最近の記事などから、読者の方の基礎的な理解の一助になるような「まとめ」を行ってみた。

 「IoT=Internet of Things」を日本語に訳すと「モノのインターネット」となり少々間が抜けている。日本語版ウィキペディアでも、「IoT」や「Internet of Things」ではなく「モノのインターネット」が語のタイトルになっているが、この言葉は普及するとは思えないので、「アイ・オー・ティー」で国内でも定着していくだろう。
 多数のIT系、ビジネス系の雑誌で特集が組まれていて、概念論や構成技術等について多数の議論や解説がされているが、我々ビジネスの現場にいる者からすると、事例に学んだ方がわかりやすいと思われ、今回は事例を中心にまとめた。
 たとえば、筆者がこれを書いている4月18日時点にGoogleニュースでIoTと検索すると具体的な事例としてはこんなニュースが出てくる。

■100万台超の複合機をグローバルに結ぶ! キヤノンの基幹サービスを支えるIoT基盤の全容(2015.4.13)
 http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1503/25/news005.html

→キヤノンの複合機にIoTモジュールが組み込まれており、稼動情報やカウンター情報がクラウドに蓄積され、保守管理サービス及び販売活動に活用される。


■マスターズゴルフトーナメントの新しい楽しみ方―IBMの新IoT技術「Track」(2015.4.16)
 http://japan.zdnet.com/article/35063096/

→マスターズの会場であるオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブのコースの至る所に多数のレーザーを配置することで、ボールの位置(動いている状態も含む)等をほぼリアルタイムでゴルフファンに提供している。


 IoTの基本構成と言えば、インターネットへの接続機能を何らかのマシンに搭載し、センサー技術と連動させて、マシンの状態をネット経由で収集し活用するということになろう。そうした意味では一つ目のキヤノンの事例は典型的かつわかりやすいもので、この形ではこの事例も有名である。

■コマツのコムトラックス
 http://www.komatsu-kenki.co.jp/service/product/komtrax/

→コマツ製の建設機械車両から、車両の位置情報や稼働時間、部品やオイル等の状況等を収集し、保守管理サービス、販売活動その他に活用している。


 マスターズの事例のほうは、ゴルフボールの状態に関する情報を収集しているのであるが、ボールにはネットへの接続機能はなく、張り巡らされたレーダーによりボールの情報を収集している。おそらくボールに接続モジュールを搭載してもドライバーで力いっぱいショットしてしまうと壊れてしまうのだろうか。

 次の形もIoTのひとつの形態と言え、この部類にはこちらも入るであろう(大阪にはこれがないのでビニール傘がたまって困る)。

■東京アメッシュ
 http://tokyo-ame.jwa.or.jp/ja/amesh/

→ご存知、東京都の下水道局が提供する降雨情報を提供するWebサービス/スマホアプリ。レーダーによる反射と、地上の雨量計から収集したデータでリアルタイム性の高い降雨情報を提供している。


 ちょっと事例を見ただけでも、他にもこんなのがあるよ、とかこんなこともできるのではないか、とか事例やアイデアが湧いて来る方も多いのではないだろうか。
 そして我々IT業界はこの動きに対しどのように商機を伺っているだろうか。

 上記の事例のキヤノンの事例はオラクル社の「Oracle Exadata」の、マスターズの事例はIBM社の「Track」という技術の宣伝であるようなので米国の大手IT企業の動きはここからも窺い知れる。
 その他、製造業向けにCAD等のソフトウェアを提供してきた米国PTC社もこのような動きを発表している。

■PTC、「デジタルとリアルをつなげる」IoTを事業の中核に―拡張現実も活用(2015.4.17)
 http://japan.zdnet.com/article/35063304/

→PTCは今後IoTを事業の中核に据え、これまで提供してきた各種ソフトウェアと連携させ、製造業向けに提供していくという。またIoT関連企業の買収も積極的に行っている。


 この記事の中にもあるように、IoTはとりわけ製造業にビジネスモデルの大きな変革を迫るものである。これからも製造業及び製造業を顧客に持つITベンダーなどを中心に動きが活発化していくであろう。
 なお、筆者が所属しているNTTコミュニケーションズも国内の大手製造業にITインフラを多く提供しており、このような記事も出ている。

■NTTコム、IoT向けシステム世界展開 188カ国で(2015.4.17)
 http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ10IJU_X10C15A4TJ1000/

→IoTをやりたい製造業などに向け、世界規模でインフラやシステムを提供していき、急拡大する需要に備えるという。


 一方、国の動きとしてはこのような発表もある。

■IoT導入へ競争力会議で議論、具体策握る成長戦略の命運(2015.4.14)
 http://www.newsweekjapan.jp/headlines/business/2015/04/147511.php

→政府が今年6月に改訂する「日本再興戦略」の中で、大きく遅れをとるIoTの分野での予算措置を含めた具体化を検討しているという。


 なお、次の記事を見てもやはり政府の動きは遅れているようだ。

■「製造業革命」日本に焦り IoT、独はオープン方式で実績(2015.4.17)
 http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ16HQX_W5A410C1TJ2000/

→ドイツで開かれた世界最大級の産業見本市で、開発期間短縮など国を挙げた技術開発の成果をアピールしており、企業がそれぞれ「独自の戦い」をしている日本とは対照的だとのこと。


 2013年から2014年にかけて、経産省でクラウドの補助金制度などが運用されたが、あまり活用されていないし、どうもピントが外れた印象は否めなかった。そこから考えるとIoTに関する補助金等が今後発表されるのであろうが、もちろんしっかり検討して頂きたいところであるが、あまり当てにしない方がいいかもしれない。
 今後も日本では製造業やIT企業など民間企業それぞれの取り組みが中心になって進んでいくだろう。IT分野とは違い、製造業では日本企業はこれまでも世界規模で十分戦えてきていることを考えると、IoTの分野は日本にとってはまさにチャンスであるし、そのチャンスをモノにしなければならないのは言うまでもない。

 さて、第四の産業革命とも言われるIoTであるが、このコラムの本題であるスキルの面ではどのように考えればよいだろうか。
 IoTが本格化し、IT企業もこれへの対応が増えてくると、これまでのビジネスで必要であったスキルとは別の分野のスキルが当然必要になるだろう。新たに必要になるスキルとして、例をあげるとすると「データサイエンティスト」がある。
 データサイエンティストとは、膨大なデータから、ビジネスに生きる知見を引き出す専門家のことである。大量に集まるデータから、すぐに対策を打つべきものや商品開発につながるアイデアの種を見つけたり、数字の変化から消費動向の変化を読み取ったりする役割だ。
 BI/BA等の情報分析ツールは多々あれど、結局何を目的として何のデータを収集するのが有効なのかを分析した上でツールを使わないと意味のないことになってしまう。そのためデータサイエンティストが必要なのである。
 IoTの仕組みを使って様々な膨大なデータが収集されることになるが、製造業の中ではそのデータを活用するための知見を持った人材は多くはない。ITベンダーやコンサルファームにそうしたプロセスをアウトソースしたいと思う製造業も多いだろう。
 ところが一方のITベンダーやコンサルファーム側にもそうした人材はごく少数である。これからは、ITベンダーやコンサルでもデータサイエンティストを養成していく必要があるだろう。
 なお、データサイエンティストとして有名な西内啓氏が自身の知見をツールとして提供すべく、「データビークル」という新たな企業で開発中である。

■やまもといちろう氏に西内氏、油野氏が新会社設立。データサイエンスの専門企業、データビークルって何だ?
 http://enterprisezine.jp/dbonline/detail/6588

 ちなみに現在開発中のこのツールは筆者が所属するNTTコムのクラウドの上で展開される予定であるが、データサイエンティスト不足に悩むITベンダーや製造業等の企業にとって非常に有益なものになると思われる。スキルや人材の不足を補うために、こうしたツールの活用も一考である。

 一方で、各ITベンダーでは従来のビジネスモデルの部分はできる限り自動化・省力化し、IoTのような新たな分野で活躍できる人材を育成していく必要がある。ただし、そのためにはまず人材育成の担当部門でIoTの流れを知り、どのような人材をどのように育成していくのかを考える役割をしっかり果たす必要がある。
 IoTの仕組みで集まってきたデータを、何を目的とし何のデータを収集するのか、それなしでデータを集めても意味のない分析になるのとまさに同じようなものである。


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