人材育成コラム

リレーコラム

2018/10/22 (第101回)

みんなのデジタルリテラシー 〜デジタルスキルのLearn&Update〜

ITスキル研究フォーラム AI人材ワーキンググループ主査
株式会社チェンジ 執行役員

高橋 範光

 ここ数カ月、ニュースを見ていると、各社のAIに関する取り組みやデジタル企業の立ち上げ・合弁などの動きが少しずつ増えてきているように見受けられる。第4次産業革命、デジタル・トランスフォーメーション、Connected Industries、CPS(Cyber Physical System)などのキーワードとともにデジタルへのシフトが本格化しつつある予兆だと考えられる。

 人材に関しても同様の動きはあり、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)は、2017年にこれまでのITSSとは独立した形でITSS+(プラス)を立ち上げた。筆者もITSS+の立ち上げ検討を行った「第4次産業革命に対応したスキル標準検討WG」で委員を務めており、現在では、データサイエンス、サイバーセキュリティ、IoT、アジャイルなどのスキル標準を公開している。さらに、経済産業省からは、経産大臣認定となる第4次産業革命スキル習得講座認定制度を立ち上げ、デジタルシフトを推進する人材育成の準備が整いつつある状況といえる。

 しかし今後、国内でのデジタル・トランスフォーメーションは本格化するといえるかというと、まだそうではないだろう。むしろ、依然として楽観視できる状況とはいえないと考えたほうがよいだろう。
 皆さんを取り巻く環境を考えてみていただきたい。デジタル・トランスフォーメーションは進んでいるだろうか? 実感できるような事例が豊富にあるだろうか? 決してそうではないだろう。では、この状況を打破し、真のデジタルシフトが進んでいくには何が不足しているのであろうか。

 話はさかのぼって、第二次産業革命。主役となったのは自動車の登場である。それまでの移動手段であった馬車が十数年の時を経て、自動車の時代に変わっていった。自動車産業は現代にまでつながる一大産業であり、当然自動車の普及にともない、自動車産業に携わる人材も一気に増加することになった。ここまでは、前述したデジタルシフトの様相と非常に近しい状況だといえる。
 しかし、この2つの事例には大きな違いが存在する。それは、利用する側のリテラシーがどこまで高まっているかである。
 1900年前半の自動車の普及には、自動車を利用したいと思う人の増加、自動車利用者への理解、さらに、自動車を利用するシーンとして、単に個人の移動手段としてだけでなく、バスなど大勢の人の移動手段、物流手段といった様々な目的を想定したものが具体的に上がってきたことなどがポイントになったと考えられる。

 一方、現在のデジタルシフトを見ると、前述したとおり、やっとデジタルを導入できる人が育ち始め、事例が出始めている状況ではあるものの、一方で、我々の身の回りに、そもそもAIやIoTなどのデジタル活用を正しく理解している人、そしてデジタル技術を利用したいと思っている人がどの程度いるだろうか。そして、AIやIoTなどのデジタル技術をどのような利用シーンで活用しようと考えているか明確になっている人はどの程度いるのだろうか。

 デジタル・トランスフォーメーションを本格化するために、今後注力していく領域は大勢を占める「利用する側」のリテラシー=デジタルリテラシーにあるのではないだろうか。プログラミングやデジタル技術の作り方をたとえ一人ひとりが知らなかったとしても、最新のデジタル技術を有効活用できる方法を見つけられれば、もしくは最低限前向きに活用しようとしている人の邪魔をしなければ、おのずと生産性は上がり、デジタル?既存産業の新たなる事例が生まれ、日本の成長につながってくるであろう。

 AIは何でもできる魔法の箱だと考えていないだろうか? APIとは何か答えられるであろうか? 統計解析手法を学んでいれば、データサイエンスができると思っていないだろうか? パソコンを作れなくてもパソコンを使う時代が来たように、デジタルを作れなくてもデジタルを使う時代がもうすぐくる。その時に、各自が利用シーンを具体化できる「デジタルリテラシー」を持っているかどうか、そして日々更新されるこれらの技術をアップデートしていけるかどうかが、これからのデジタル時代の生命線となってくるだろう。

 デジタルリテラシーのLearn&Update、あなたはいつから始めますか?


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